媛媛講故事―16

                         
      白蛇伝 Ⅱ             何媛媛

 


 許仙は白娘子の気品に溢れた顔立ち、しとやかな立ち居振る舞いにすっかり心を奪われてしまいました。そして付き合っているうちに二人の相手を想う気持ちはだんだんに深くなり熱い恋に落ちました。二人のそんな様子を見るのが嬉しい小青は何彼と許仙と白娘子の二人を励ましてはいろいろと結婚の準備をし、ついに二人は結婚しました。

 許仙は元々生薬屋で働いていましたので、結婚した許仙と白娘子は生薬屋を開き「保安堂」と名づけました。二人は真面目に商売をし、また心を込めて患者を診療したりして、人々の難病を治しましたので間もなく二人はそのあたりの有名人となり商売も日増しに繁盛して行きました。

 しかし、「保安堂」が繁盛すればするほど或る人の機嫌を損ねることになりました。或る人というのは「金山寺」の法海というお坊さんです。許仙と白娘子の店の周辺では誰もが「保安堂」で薬を調合してもらい、病気を治して貰ったので菩薩の保護を求める必要がなくなりお寺にお布施を上げに来なくなったからです。法海はいらただしく思い、この「保安堂」という生薬屋はいったいどういう人がやっているのかを見に出掛けました。店を覗くとちょうどその時、白娘子が患者を診療しているところで、その姿を見た法海は「あれはあの白蛇めじゃないか!」と大変びっくりしました。

 実は、この法海はかつて西湖の中で白蛇に負けた亀なのです。白蛇に負けた後西天まで逃げて、如来佛の蓮花宝座の下に身を隠してずっと如来佛の説経を聞いていましたが、卑しい品性は一向に変わらず、如来佛が居眠りした隙に如来佛の三つの宝物である「金鉢」、「袈裟」、「禅杖」を盗んで下界に下ると、自らを法海和尚と名乗り「金山寺」お坊さんに変身していたのです。

 話は戻って、白娘子を見た法海は復讐の念を抱くと策を巡らしました。そして法海は許仙に「商売繁栄をお祈りします」と言葉巧みに誘い掛けたので、許仙がお布施を上げると法海は重ねて

 「願い事があれば五月の五日、つまり端午の日に金山寺に来てください。重要な話があります」と言いました。

  許仙は喜んで承諾しました。そして五月五日、許仙が「金山寺」を訪ねると法海は、

 「信じられないかもしれないが、実はあなたの奥さんは白蛇の妖怪なのです」と告げました。

 「え!なんてことをいうのですか。私の奥さんは優しく、賢く、妖怪であるはずはない!」

 許仙は思わず大きな声で反論しました。しかし、法海は「信じられないなら、家に帰ってこの雄黄酒を奥さんに飲ませてご覧なさい。きっと白蛇の姿になる」と言いました。法海の確信ありげな言葉に許仙は半信半疑ながら法海から貰った雄黄酒を持って家へ帰りました。

 中国では、古くから端午の日に、雄黄酒を飲んで魔よけをする習慣があるのです。その夜、晩ご飯の時、許仙は法海に言われたとおり「今夜は節句だから雄黄酒を飲もう」と白娘子に勧めました。白娘子は気分がすぐれないと何度も断りましたが許仙があまりに強く勧めましたので仕方なく飲んでしまいました。

 晩ご飯の後、気分が悪くなった白娘子は寝床に駆け込んで行きました。心配した許仙が帳をあけてみると、帳の中に大きな白蛇がとぐろを巻いているではありませんか!許仙は驚きのあまり気を失ってしまいました。

                                                    (次号に続く)




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